チャリンコ釧路生活

車がないと生きていけない釧路で、自転車のみの生活に挑戦していました。

スピッツ「見っけ」考察

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令和元年にスピッツの新しいアルバムが聴ける喜び。

今作はThe Whoのような派手なギターアレンジのオープニング曲「見っけ」とエンディング曲「ヤマブキ」が対になった、壮大なロックオペラのごとき作品。前作「醒めない」の歌詞に出てきた「ロック大陸の物語」が具体的に綴られているようだ。

2曲目のNHK朝ドラ主題歌「優しいあの子」を主軸に、ポップ路線のアルバムではなく、やや懐古的な骨太のロックアルバムに仕上げたのは、あまのじゃくなスピッツらしい。朝ドラの舞台となった北海道とロック大陸がリンクするように、ジャケットワークもどこか北海道っぽい。

そういえば、前作「醒めない」に収録された「雪風」も北海道を舞台にしたドラマの主題歌だった。スピッツサウンドと北海道の相性のよさは、釧路に移住してからますます実感している。

3曲目の「ありがとさん」は、優しい歌詞や歌メロとは裏腹に重厚感のある歪んだUKロックのよう。こちらもロックテイストの強い「ラジオデイズ」の後は、イントロのギターが「涙がキラリ☆」みたいな「花と虫」。この曲のアレンジが「君と暮らせたら」にも似ていてるのは、昔と対比する歌詞の内容から意図的なようだ。大陸的な「ジャングル」という言葉も出てくる。

「流線型のあいつより速く」と歌うアップテンポの「快速」は、半音ずつ動くギターアレンジが面白い。ほっと一息つけそうな「ブービー」の歌詞は、「いつもブービー」と「レモン風味」の韻の踏み方がきれい。

TOTOの「アフリカ」を彷彿とさせる、16ビートが心地よい「YM71D」(「やめないで」と読むらしい)も大陸的。荒野をかける疾走感の「はぐれ狼」から、このアルバムのクライマックス「まがった僕のしっぽ」へと続く。プログレのように変拍子と転調が訪れるこの曲は、ストーリー仕立ての歌詞も斬新で、まさに「ロック大陸の物語」だ。

ラスト前の「初夏の日」は以前から演奏していた曲で少し趣が違うが、一服の清涼剤のよう。通常盤の最後は、スピッツと盟友クージーによるセルフプロデュースの「ヤマブキ」で「ロック大陸の物語」を力強く締めくくる。

前作「醒めない」の「みなと」や「コメット」のような歌もののキラーチューンはなかったが、いつまでも輝きを失わずアップデートしていくスピッツの最新型をここに見っけ。

 

※釧路のドライブにもってこいのスピッツ

http://kushiroshiro.hatenadiary.jp/entry/2018/07/18/163847